タイ北部チェンライの山奥に住む、アカ族の村に泊まった滞在記。
村人との出会いと村での生活、そこで感じたことについて記していく。
村人との出会い
アカ族の村にお世話になるきっかけは、以前チェンマイでいろんな民族の手仕事ものを販売するイベントを開催していて、そこで出会った子がアカ族だった。
その時もいろいろ話をさせてもらってアカ族の天然染めのコースターを買った。
そんなイベントで会っただけでなんで村まで駆けつけたかというと、私自身がもの作りの背景や文化を知りたいからだ。結局チェンマイだって都会である。実際に村での生活を見てみたかった。
いろいろ話をしていると、村に泊まれるよ。ということだったのでそれは行かねば!とイベントのときに連絡先を交換して、次回は絶対村まで行くぞ!と心に決めていた。
なぜかタイにいると日本にいるときより行動力が増す。恐いものなんてない!
そして日本に帰国後のイベントで仕入れたコースターを販売する中、ありがたいことに7月のOLD NEW MARKETのフライヤーに掲載してもらった。これは、もう絶対に村まで行かなければ!とより一層、アカ族と会うのが楽しみだった。

村に泊まるまで
チェンマイ行きが決まったものの、タイ人との約束は早すぎても先が読めずに決めづらい。私もそのタイプなのでギリギリに希望日を伝えてたら泊まらせてもらえることになった。
問題は、村までの足である。幸い途中の大通りまでバスが通っているので、事前にバスターミナルにチケットを買いにいった。すると、降りたい場所にはバス停がない。どうしてもと交渉して、特別に降ろしてもらうことになった。
1日目
まずはバスターミナルにバイクで向かう。バイクはバスターミナルに置いたままバス旅の始まり!バスの運転手に降りたい場所を伝えたら、そんなとこに行って何をするの?その後の足はあるのかと心配された。そりゃそうだ。バス停がない場所なんだからねえ。
そんなこと言われたら余計にワクワクしてきた。(バックパッカー魂が再来)
バスはほとんどの人が終点まで乗るのでみんな寝ている。私も寝たかったけれど、途中下車なので寝るわけにはいかない。時々グーグルマップとにらめっこしてようやく目的地に着いた。
そこから、村までソンテウ(乗り合いバス)に乗る。正直ソウテウがあることにびっくりした。山奥なのに車がなくてもいけるのかと。でも、ソウテウは1日1便、市民の足になっているようだ。私以外はおじいちゃんおばあちゃんばかり。そして、ここに着いた瞬間にみんなアカ族だということが分かった。アカ族はタイ語ではなくアカ語を話す。何を言ってるか全くわからない!アカ語は理解できないけど、独特の音の感じでアカ語だなということはわかる。わー!同じタイなのに異国感!久しぶりの旅気分だ。
村人はみんな斜めがけのアカ族の手刺繍バッグを使っていた。日常でも使われているのを見れてそれだけで嬉しい。チェンマイの街中でアカ族はあまり見かけない。観光地を除いて彼らはアカ族です!とわかるような洋服やバッグは日常では身に着けていない。
山道をソンテウでひたすら登る。ソンテウは車の後ろがオープンなので、荷物をしっかり持っていないとぶっ飛んでしまう。さっきまで街だったのに、急に畑が見えて木が生い茂っている。
山道に向かう道中はいつだってワクワクする。
村に着くと、イベントで会った子が来てくれた。彼女はSちゃん、27歳。若くして村のために動いている。「実は他にタイ人も3人来ているの!」と言って、チェンマイから来たタイ人(街の人)も一緒に合流して5人でまずは村を散策した。

彼女が住んでいる村はとっても小さく、お店もないから10キロ以上離れた別の村へ、そこには少しだけお店が並んでいてカフェがあった。Sちゃんは村に飽きるとよくここに来るという。
カフェからの眺めは最高だった。普段人混みや高いビルを見ている生活とは一転。この景色を見ただけで日々の疲れがぶっ飛んだ。映えカフェというわけではなく、ありのままの自然が豊かだということ。人間こっちの方が絶対心地いいよなと思った。

チェンマイから来た3人組は、Sちゃんとのトークビデオを撮るのが目的だったようで、絶景を背景にビデオ撮影が始まった。
事前にこうなると知らされてなかったし、言ってみればダブルブッキングである。普通の観光客だったらなんで人のビデオ撮影に付き合わなければいけないのかと思うはずだ。だが、ここはタイの村。そんなことでいちいち疑問を持ってはいけない。Sちゃんに「ちょっとビデオ撮るからその間はゆっくりしててね~」と言われた。これぞタイスタイル。
でも、どんなビデオなのか気になって横で聞かせてもらった。それは、アカ族のコミュニティについて外部に発信するビデオだった。そのためにタイ人同士で英語で話している。
撮影のタイ人が質問してSちゃんが答えていく流れ。撮影の子はチェンマイ人、いわゆる街の人である。同じタイ人といっても街と山岳民族はルーツや文化が違う。いろいろな質問をチェンマイ人が投げかけた。それがとってもよかった。私もこの村に来て聞きたいことがたくさんあったけど、もうほとんど聞いてくれたし、チェンマイ人から見たアカ族の目線も知れた。
一見、ダブルブッキング案件が私にとってはとっても貴重な時間だった。
そのことをそのまま二人に伝えたらとっても喜んでいた。たまたま、同じ日になっただけだけどタイ人がいると会話も深まる。
その後はVちゃんの家へ。私が泊まらせてもらう家だ。Vちゃんも28歳と若く、Sちゃんと共にこの村のためにこうやって外部から来た人のために動いている。
全員揃ったところで、ようやくSちゃんとVちゃんの村散策をしようと準備をしていたらスコール発生。タイはちょうど雨季。こればっかりはしょうがない。高床式の上に上がっておしゃべりタイムに変更。

SちゃんもVちゃんもこの村で生まれ、一度バンコクやチェンマイに出たもののまた村に帰って来た。
やっぱりこの村がいいと言う。村では自給自足だから食べ物には困らないけど、仕事がない。それでほどんどの若者は外に出ている。村にいるのは子どもと年配層ばかり。確かに同世代はSちゃんとVちゃんしか見かけなかった。
そんなこんなで話をしていたらあっという間に夜ごはんの時間。タイではおかずを大皿に盛って、各自のお皿にごはん、そこにおかずを載せていくスタイル。これはみんな同時じゃないとできないし、四角くなっておしゃべりしながら食べる。日本での食生活よりタイのこのスタイルが好きだ。

アカ族のごはんは野菜もりもり、ナンプリックというタレみたいなものも普段のタイ料理とも違う。素朴なのにとってもおいしい!食材はすべて村で採れたもの。買う必要はないという。
SちゃんVちゃんは普段のありのままの食生活について一品ずつ教えてくれた。
お腹いっぱいになったところで今日はここまで。また明日ね~といってそれぞれの寝床へ。
2日目
朝起きて、ドアを開けたら目の前が山。雨季ということもあって霧がかかっている。とっても幻想的だ。これを見に来るだけでも価値はある。

そういえば、朝は何時に集合ね!とか言われなかった。あはは。タイスタイル。日本のツアーならみっちりスケジュールが決まれているけどここはタイ。自由にのんびりするのがいいのだ。
カメラ片手に村をぶらぶら。朝は鶏が鳴いていて、子どもたちが元気に学校に向かっている。学校はこの村にないので15キロ先の山を下ったところまで毎日車で往復しているらしい。歩いて通える日本、なんて贅沢なんだろう。
しばらくするとお母さんが朝ごはんの準備を始めていた。一緒に野菜の筋取りをさせてもらう。

村に行ったときはその料理は作れないけど、どうやって作っているか覗かせてもらうのも面白い。
キッチンは昔ながら。煙が土の壁の穴が開いたところにスーと流れていくのも様になっていた。

朝からもりもりごはん。といっても脂っこいものもないし、日本人でも食べやすい味付け。いつも朝ごはんはあまり食べないタイプの私もついついたくさん食べてしまう。

食後は村探検へ。歩きながらそこら辺に生えている植物の説明をしてくれたり、昔は遊ぶ道具がなかったから植物を使っていたんだよと、植物で人形を作ってくれたり、アクセサリーを作ってくれた。
都会の子どもはこんな知恵ないだろうなと村の生活も微笑ましかった。


おばあちゃんが畑に向かう後ろ姿がかっこよかった

奥には棚田。雨季だから緑が青々としている。

下に流れている川を見ながらたそがれタイム
村探検が終わるとチェンマイ3人組は街へ帰っていった。たまたま一緒になった二日間とっても貴重な機会だった!ありがとう!
また家に戻り、アカ族の手刺繍について教えてもらう。
昔は刺繍ができないと結婚が出来なかったとか、刺繍の量で価値がわかるから、少ないものを見てこれは疲れちゃったね~とか言ってアカ族の本音を聞けた。


たまに街中でもアカ族の手刺繍物を見かけるけど、一部レトロなダサかわいい布が挟まっていたりして何でこれをチョイスしてしまったんだ?これがなかったら日本でも売れるのにー!と度々思っていた。
だけど、そのダサかわいい布は高級品だったのだ。昔は手刺繍なら自分たちで作れるからお金がかからない。布を買うのは街まで行かなきゃいけないし、布も買うお金も必要。だから、これを作った人は奮発したんだよ!と教えてくれた。なんと。そういうことだったのか。
これを説明してくれたSちゃんは27歳だからわりと近い感覚を持っているし、街にも行っているので感性がある。おばあちゃん世代と話すのも貴重だけど、若者と自分の感性もありながら意見をいい合えたのが私にとってありがたかった。
そしてアカ族の衣装を着てみて!と勧められるがままに全身装着。頭に銀のパーツを乗っけるのでとっても重い。アカ族は日常生活では衣装は着ない。アカ族ってジャケットものなので、カレン族のように日常で着るようなものではないのだろう。昔は洋服を買えないから自分たちで刺繍してみんな着ていたよ、というが今は村人みんなTシャツだった。日本人が来るからと、わざわざ構えるのではなくありのままの生活を見せてくれた。


夕方になり、学校から子どもたちが帰って来た。村が小さいのでみんな親戚のよう。ちょうどすいかを食べていたら寄ってきた。子どもたちにも分けておいしいねってみんなで食べた。こんな距離感、東京にはないだろうなあ。
アカ族はお祭りでブランコに乗る。子どもたちが遊んでいたが、ブランコがとんでもなく大きくて、まるで遊園地のよう。私も乗らせてもらったが空に飛んでいきそうで怖かった。
子どもたちはキャッキャと笑いながら楽しんでいる。逞しい村の子どもたち。

あっという間に夜ご飯。初めて私とSちゃんVちゃんの3人での食事だ。タイ人3人組がいたときはやっぱりタイ語力が追い付かないので聞き役に回っていた。というか、日本でもいつも聞き役だからそれでいいのだけれど。3人だとより深く話ができた。
Sちゃんが家に帰り、Vちゃんとさらに話を続ける。
村でかかる生活費を教えてくれた。それは思ったより安かった。「ね?お金かからないでしょう?子どもがいなければ学校もないし自給自足だから生活はできるよ。でも会社もないから仕事がない。お母さん世代以上はタイ語があまり話せず読み書きができない。だから外に出て働くことができない。20、30代はみんなチェンマイやバンコクに行って働いている。海外に行っている子もいるよ。でもそうやって仕送りしているからそれでいいよね。」
Vちゃんのお姉ちゃんもオーストラリアに住んでいるという。だからVちゃんもワーキングホリデーでオーストラリアに行きたいとか。その夢かなえて欲しい。きっとVちゃんならできる!
アカ族は小さいころからアカ語とタイ語を使い分けているから言葉の理解力があるみたい。SちゃんもVちゃんも英語がペラペラだった。外国人がいないから話す機会がないけどね、と言って笑っていたけど、それでもそのレベルになるのは相当努力したのに違いない。
その後に、「日本の生活は幸せ?」と聞かれた。この質問たまにタイである。日本でわざわざ幸せかなんて聞かないからいつも即答できないし、幸せとは?と毎回思ってしまう。
いつも、「日本の生活よりチェンマイの方がサバーイサバーイ(心地よい)かな~」とふわっとした答えになっていない返答をする。Vちゃんにも村での生活は幸せか聞いたら、幸せだという。「食べ物はあるし、自然豊か、家族もいる。それで充分だよ」と。
「バンコクに住んでいたころは仕事してたからお金もあったし、ユニクロで服を買うのが好きだった。(日本よりもタイはユニクロが高い、日本人でも高いと思う)でも今の生活は必要ない!」と話しながら、その笑顔はとっても幸せそうだった。
Vちゃんともたっぷり話をし、20代で一度バンコクに住んでいたからこそわかる外とこの村のことを教えてくれたのがとってもよかった。何度も他の山岳民族の村に行ったことはあるけど、大抵年配の方がずっとそこで暮らしている。もちろん、そんな方からの話も貴重だけれど、今回のように20代の目線で話してくれたことは今までとは違った経験だった。
それをそのままVちゃんに話したらそれは良かったと言ってくれた。
Vちゃんは日本の食べ物(バンコクには日本食がたくさんあるから知っている)が好きだという。いつか日本に行ってみたい!と言ったので、うちに泊まりなよと誘った。
「それおもしろいね!お互いの家にホームステイだ!」とVちゃんもノリノリだった。
いつかそれが実現できたらいいと思う。観光地ではなくて共に文化に興味があるからこそ話が尽きないだろう。
3日目
鶏の鳴き声と共に起きる朝
この日はチェンマイに帰るだけ。バタバタと準備を済ませて、名残惜しい村での滞在が終わった。
村人に「また来てね~」と見送られながら、村を後にした。
まとめ
観光客としてではなく、ありのままのアカ族の村に泊まらせてもらった三日間は、日本やチェンマイの生活から離れ、とってもゆっくりとした時間だった。
もの作りの背景を知りたいということは、その文化を知ること。SNSが発達している現代でも、やっぱり自分の目で見て肌で感じないとわからないことがある。彼らと共に過ごしてたくさん話せたことは、私にとっても貴重な時間だった。
また近いうちにアカ族のみんなと会えますように!
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↑この下書きは村から帰って来た次の日にカフェでばーっと一気に書き上げた。
時間が経つと忘れてしまう、その時に思ったこと、感じたこと。正直疲れていていたけど書いておいて本当に良かった。日本に帰国するとバタバタした日々。二ヶ月ぶりにこの下書きページを開いたら、アカ族の村に行ったことは忘れないけど、やっぱりその時の感情を残しておくことは大切だなと思った。誤字脱字だけ訂正してアップ。
アカ族のことをみなさんにも知ってもらえたら嬉しいし、自分の備忘録のために。
アカ族のみんな、コップンカ!